認知バイアス、知ってます?

認知バイアスと心理メカニズムを探ってみる 社会科見学会 #005

「心理メカニズム」と「認知バイアス」と言う二つの言葉をご存じですか?

古くから心理学や行動経済学で取り上げられる用語ですが、今回は心と脳にあるその世界を覗いてみましょう。

私たちの思考や行動には、無意識のうちに働く「心理メカニズム」と、

それによって生じる「認知バイアス」の二つが深く関わっています。

これらは古くから研究されてきた概念ですが、日常生活でも私たち自身だけでなく、

さまざまなニュースのもととなる事件や出来事を動かすほどの大きな影響を及ぼしているのです。

まず簡単に二つの概念を説明しましょう。

「心理メカニズム」: 人間の行動や感情、思考の背後にある心の自動機械的な働きや

                                                      そのプロセスを指し、日常生活や社会的な行動に深く関与しています。

「認知バイアス」: 上記の心理メカニズムが働くときに生じる「思考の歪み」

                                               (敵意を感じる、都合よく解釈する など)

ここに出てきた「認知」とは、感覚・感情・思考などを通じて情報を処理する心の働きのことです。

認知症という病名にも使われるように、これは私たちの判断や理解の根幹をなす機能になります。

私たちは論理的に考えているつもりでも、実際には心理メカニズムに左右され、また認知バイアスに影響されています。

筆者は、認知バイアスの良い面を「バイアス・ヒーロー」、悪い面を「バイアス・モンスター」と命名し、特に後者が誤った判断や他者との摩擦を生むことに警鐘を鳴らしています。

心理メカニズムには大別すると3つの働きがあることが分かっています。

  1. 情報処理の土台:膨大な情報を選択・整理・解釈することで、現実を理解する枠組みを形成します。
  2. 効率化:ヒューリスティックス(経験則)を使って迅速な判断を可能にするが、これが思考の偏りを生む原因にもなります。
  3. 結果としてのバイアス:特定のメカニズムが作動することで、利用可能性バイアス、確証バイアス、損失回避バイアスなどが生じます

これらは、心理メカニズムという「原因」があるからこそ生まれる「結果」としての認知バイアスです。

人間の脳は危険回避のために進化してきたため、自己防衛型のバイアスが生じやすくなっています。

たとえば:

  • 正常性バイアス:危機的な状況でも「大丈夫だろう」と楽観的に捉え、適切な対応を取らない。
  • 敵意帰属バイアス:他者の行動を敵対的と解釈しやすくなる。
  • 確証バイアス:自分の信じたい情報だけを集め、都合の悪い事実を無視する。

また、社会的環境もバイアスを強化します:

  • 同調バイアス:多数派に流される
  • ホーン効果:一つの欠点から全体を否定的に評価する

これらは職場や日常の「あるある」な場面で頻繁に現れます。

認知バイアスは私たちの心の中から完全に無くすことはできません。

でもその存在を理解し、自覚してコントロールすることは可能です

鍵となるのが、次の有名な「思考のパターン理論」です。

二つの異なるシステムで私たちの認知活動が展開されているとする理論です。

多くの認知バイアスは、この「システム1」によって生まれます。

例えば、第一印象で相手を判断する「代表性ヒューリスティック」や、目の前の情報に強く影響される「アンカリング効果」などの認知バイアスがその典型です。

システム1が誤った結論を出しても、システム2が介入しない限り、そのまま認知バイアスに基づいた行動を取ってしまいます。

一般的に動物本来の生存本能で、脳はエネルギー消費を抑えるためにできるだけシステム1を使おうとするためです

その結果、「バイアス・モンスター」の出現を招き、偏った判断から悪い結果を招くことになります。

そこで「熟考的思考/理性」のシステム2を意識的に使うことで、その偏りを抑えることができます。

 

具体的な対策としては:

➀「これはシステム1の判断か?」と自問する

② 多角的な視点を持つ

③ 感情に流されず冷静に判断する

④ 偏った情報源を避ける

⑤ 他者からのフィードバックを活用する

いろいろ試してみましょう。客観的な観察眼がバイアス・モンスターのコントロールを可能にします。

多方面からの研究により、認知バイアスは現在300種以上存在し、私たちの行動や判断に影響を与えています。

その正体と背景にある心理メカニズムを理解することで、誤った言動を防ぎ、より柔軟で客観的な思考を育むことができます。

本ブログでは、日常に潜むバイアス・モンスターの事例や対策を、今後解説していこうと思います。

また、代表的な認知バイアスの悪い面50種をまとめた

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どうぞお立ち寄りください。

了 

By  参禅寺 源吾

本記事は、2025年2月に執筆掲載したもので、今回ブログの全面改装のため再編集しました。

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