Society #004

さすらいの自転車

 ある晴れた日、片側二車線道路の横断歩道で青信号に変わるのを待っていると、いろいろな車が目の前を行き来していきます。

 ふと車道側の端に視線を送ると、歩道側に近い箇所に青いゾーンがずーっとペイントされていました。
これが「自転車専用レーン」か。鮮やかなブルーだなあ。
でも誰もそこを走る自転車はありません。

 反対車線側を見ても同様に青く塗装されたレーンがありますが、やはり自転車は歩道を悠々と走っています。
またその自転車専用レーンをふさぐように貨物トラックや乗車が複数台も路上駐車状態で停車しています。

cyclesports.jp 2023.09.08記事より借用させていただきました

 一台の自転車が走ってきましたが、路上駐車の車両に直進を妨げられ、車道中央に出てきました。
ところがその後ろにいた乗用車が自転車に警告クラクションを鳴らします。
つまり自転車が左側から割り込んできたとでも思ったのでしょう。

これは危ない! 

 路上駐車に占拠された自転車専用レーンでまともに自転車が通行できないのはおかしいではないか。
その様子をしばし見ていると、幼児を載せたママチャリがこちらの視界に飛び込んできました。

 自転車に乗る若い主婦に「邪魔よ!」と言わんばかりに睨まれました。
信号待ちで歩道に佇んでいるだけなのに…。

 歩道はいったい誰のもんだ! 自転車は本来どこを走るべきなんだ?
我が国の道路行政と自転車の立ち位置は何だろうかと疑問が湧いてきました。

 そう言えば目撃した車道を行く自転車と歩道を走る自転車ではどちらが正しい走行なのでしょうか?

 これは「道路交通法」を調べるしかありませんが、そこには自転車を『軽車両』と規定しています。
さらに細かな区分がされますが、一番普及している自転車は車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合したもので、かつ他の車両をけん引していないことが条件となっており、これを「普通自転車」と呼んでいます。(ちなみに三輪の自転車も含まれます)

 車体の前後に幼児を載せているママチャリもこの普通自転車になります。

 ところで軽車両である自転車が歩道を通行できるのでしょうか?
これが『例外的』にできるのです。
元来はやむを得ない事情を除き、自転車道や車道を通行しなくてはならないのですが、そもそも自転車道そのものが至るところにあるわけではありませんし、車道は自動車との共存ですが危険が付きまといます。

 例外とは何か?
普通自転車だけが歩道の通行が可能だと言うことです。
但し、歩行者として自転車を押して歩くことが原則なのです。
実際に街でそのような光景を見たことがありません。

 皆スイスイと上手に自転車に乗って走り抜けていきます。
それはなぜ?
多くの場合、既定の標識が掲げられた「普通自転車通行指定部分」を有する歩道であり、その標識の具体例が示す以下の図です。

 日頃、あえて注意して見ていない標識ですね。
この標識が掲げられた歩道は自転車に乗っての通行が可能ですが、次のような条件があります。

「中央から車道寄りの部分を徐行し、歩行者の通行を妨げるような場合は一時停止すること」。

警視庁「自転車の交通ルール」より借用転載しました

 ということは、歩道で信号待ちの歩行者に突っ込んできたあの自転車の主婦は、本来いつでも止まれるスピードで走行しなくてはならないことになります。
「徐行」の意味するところです。

 それはともかく、自転車はどこを走れば良いのか?
車両に位置づけられた自転車が歩道に溢れてビュンビュン走っているのも奇々怪々です。
とは言え、車道にはそれこそ様々な車がそれなりのスピードで走行している現状では、そこをゆったり自転車が走行するのも危険かつ邪魔者のような気もするし…。

 いったい行政側はどのような道路対策を考えているのでしょうか?

《page2に続く》

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