Society #002
どうして教訓を共有し、生かさないのかね?
目 次
1. 避難場所の惨状
元旦の一日も夕刻に迫るころ、突然の地震ニュースにびっくり仰天でしたね。
気象庁より引用転載させていただきました。
なんと能登半島一帯で大地震、それに津波の襲来がテレビ画面に。
新年の元日、田舎から帰省して家族団らんを楽しく過ごしている最中の出来事。
真冬の日本海側で自然災害とは言え、とんでもない災難に見舞われるなんて誰も予想だにしなかったでしょう。
家屋の倒壊などで亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。
東日本大震災からおよそ13年。まだその記憶は権兵衛さんの脳裏から薄れてはいません。
ふと以前にも能登地方での地震災害があったことを思い出しました。
2007年です。
M6.9で、少なからずの被害が出たことを憶えています。
その後、能登半島一帯では群発性の地震が活発化し、2022年6月、そして2023年5月と大きな揺れに襲われています。
能登半島・富山平野・福井平野などには複数の大規模な活断層が縦横に走っていたはず。
そして柏崎原発などがその上に立っていたのではないでしょうか。
過去の災害、事件、そして世論からの様々な情報や知見などからこの地域の自治体は十分な被災対策を日ごろから準備しているものと思っていました。
被災から数日たっての某国営放送のニュースを見て仰天の連続です。
それはある被災地の避難場所である体育館の様子。
なんと被災地から避難してきた方々が、体育館のフローリング床に薄いシートだけを敷いて横たわっているではありませんか。
これには思わず絶句!「なんだ、これは?」
あのコロナ禍から教訓を何も得ていないのだろうか?
あるいは極寒の低体温症問題を理解していないだろうか?
地震の直後か、避難所開設直後か、は分かりませんが、多くの人々がその体育館の床に寒々しく横たわっています。
激しい憤りに突き上げられました。
厚生労働省も内閣府も災害時の避難所設営と運営についての手順を示してはいます。
そこに「床」については当初ほとんど何も明記がされていませんでした。
考えてもみてください。
地震に見舞われた災害地の多くは家屋の倒壊、大規模火災などから塵芥のチリ、埃、土埃などが大量に微粒子となって空中を漂っています。
また道路も陥没や液状化現象からの土砂の微粉末も同様です。
北國新聞より引用転載させていただきました。
避難者も救助者もボランティアも皆さん、泥だらけ。当たり前です、必死だもの。
その方々が避難所を出たり入ったり。
もちろん土足ではないものの、避難所の中は自然と埃まみれのはずです。
その床にほとんど直に寝る状況は仕方ないことなのでしょうか?
2020年の5月に某国営放送が『災害時の避難所 床付近でも感染リスク 新型コロナ』特集を流していました。
現在はコロナも第5類に移行し、その脅威への関心は以前ほどではありませんが、感染症はコロナに限らず、数多くあり、高齢者や乳幼児への危険性の大きさは変わりません。
その番組では実験を行った結果として、
専門家が「床に“雑魚寝”する避難所の環境を変えるなど対策をとる必要がある」と警告していました。
さらに「特に体育館のような堅く摩擦の少ない床ではウイルスが長く生き続けるという報告もある。床に落ちた飛まつの対策も重要になる」とも伝えていました。
この対策として幾つかが提示されていましたが、その中に【段ボールベッド】がありました。
床に落ちた飛まつは残りやすく、その床に雑魚寝をしていると感染リスクが高まるが、段ボールベッドでは床から30センチほどの高さが保たれるためにそのリスクを抑えることができる、と言うことでした。
報じられたニュースでは、その避難所には体の弱ったお年寄りや乳飲み子も一緒に雑魚寝でした。
プライバシー保護の段ボール壁はあっても、床面にシートの生活で、そこに土埃やチリに付着した感染症ウィルスが人の行き交いが巻き起こす気流に乗って床面を這いまわりながら雑魚寝の方の鼻や口に忍び寄っていきます。
確かに避難所開設は、地震直後の仕事としては大変です。
特にこの季節の日本海側、尋常な冬の寒さではないことは重々分かりますが、初期活動の結果であったなら問題ありと言えないでしょうか。
あるいは災害対策用としてどこかに準備保管されていて、この震災の影響で届けられていないのかもしれません。
仮にそうであるなら、保管場所からの移送動線の是非を次回の課題に挙げる必要があります。
2. 災害関連死をふせぐために
感染症リスクに加えて、もう一つの危険性を危惧しています。
それが「低体温症」と「エコノミークラス症候群」、それに「睡眠障害」です。
これらの説明はここではしませんが、特に床面の冷たさは格別でしょう。
夏場ならともかく、厳冬下では体温が奪われ、十分な睡眠や休息もままなりません。
人間は体内の芯温が35℃以下になると生命維持すら困難になります。
その危険性を助長するのが床面直寝の低体温症だと思います。
したがって床からの感染症リスクと低体温症リスクを防ぐには床面より高く、断熱効果のあるものでそれらを防ぐ対策を施すことが最良と思われます。
東京オリンピックで段ボールベッドが話題になりました。
いろいろ各国の選手陣から揶揄され、壊され、いじられましたが、その良さも理解されて今年のパリオリンピックでも採用されるとか…。
この段ボールベッドならば、床面からの感染症リスクや低体温症リスクから弱者を救える可能性が高いと言えます。
東日本大震災時にある段ボールベッドメーカーの社長がボランティアの一環で無料ベッドを各地の被災地の自治体(おそらく県庁・市町村の役場でしょう)に提供しようと一生懸命努力されたようですが、軒並み断られたとのこと。
その理由が分かりますか?
「前例が無いから」、あるいは「扱う担当部署が無いから」ですと。
国難とも言える大災害の最中、国民の命や健康よりも自分たちの首を守る、それが役人、公務員の本性と言えば言い過ぎでしょうか。
それでもようやく2023年時点で全国1794自治体のうち、51自治体が段ボールベッドの備蓄を実施しています。
ちなみに今回の災害地域となった自治体でこれまでにベッドの備蓄をしたのは幾つあるのか知りたいですね。
2020年熊本豪雨時 人吉体育館_水谷嘉浩氏撮影画像から引用転載させていただきました。
一部報道では、他県から支援品として段ボールベッドも提供されてきているようですが、絶対数が足りない状況でしょう。
確かに今回の被災地域は人口も少なく、過疎化・高齢化も進んでいるようです。
税収の面から多くの予算を避難所対策に振り当てられないかもしれません。
これまで被った地震災害や東日本大震災などの教訓を通して、この問題に無知・無関心・無理解ではなかったと思います。
さまざまな困難な事情があるでしょうが、これから本格的な冬場を迎え、さらに避難所生活は長期化する様相。
国も大事な国民の命を守る観点から床に直寝させない段ボールベッドに関する災害発生後の調達については、「経済産業省における手順」で示しています。
災害関連死は被災後の環境如何です。
精神的に弱っており、さらにその後の生活設計に大いなる絶望感を抱いて終日避難所で横たわっていることを皆が理解してあげなくては災害関連死も防げません。
これ、正論でしょう?
また段ボールベッドメーカーも、高級品ではなく、被災地避難所専用の格安簡易ベッドを開発し、標準化しましょう。
従来品より床面からの高さを抑えてはどうでしょうか。
もちろんさまざまな飛沫の飛翔具合など測定研究し、安全と衛生の両面で保障できるものでなくてはなりません。
そうすれば従来品より製品の収納スペースと重量が減らせるのではないでしょうか。
大量に購入保管するのであれば、平常時の収納場所確保が大変なことも理解できます。
また仕舞いっ放しのために湿気やダニなどの発生で実使用における問題発生となってはこれまた本末転倒でしょう。
加えて使用後の始末や処理も環境保護上、思案のしどころです。
避難所閉鎖後の再利用は課題がありますが、大量に廃棄されて燃やされればCO2問題にも影響が出ます。
広域な利用システムと廃棄リサイクルシステムの両輪を国が支援しながら、多くの自治体が関連メーカーさんと組んで災害時相互支援のサプライチェーンを構築するのも一手かもしれません。
他にも地震被災地での課題は山積みです。
特に風呂・トイレ・飲料水などの水の問題も避難者にとっては大問題!
日頃からの心得、備えが大事です。
こんな関連記事があります。参考までにご覧ください。
By 参禅寺 源吾