ISOMS #006

 品質マニュアルをより自由で従業員全員が使いやすくするために大胆に改造し再編集していくことも必要ではないでしょうか。
それには次に示す手順を考慮しましょう。

  1. ユーザーフォーカスの確立:品質マニュアルのユーザーターゲットを絞る方法です。
    誰に対してこのマニュアルを供するかを明確にしましょう。

    今の時代、外部審査機関のために体裁を整えることは不要です。
     全社員が使えることが確かに望まれますが、それではソフトフォーカスな内容になり、かえって誰にも使われません。

     ア. 新入社員用
     イ. 製造/施工現場従業員用
     ウ. 中堅管理職用
     さらに最も使用しやすい形式や情報を特定するために、彼らのニーズや要件を理解することが重要です。
  2. シンプルで明確な言語の使用:QMS規格要求事項は専門的で堅苦しいテクニカルな表現で表現されていますが、改造時にはできるだけシンプルで理解しやすい用語・表現を使用しましょう。
    特にその組織、あるいは業界で日常語と化している語彙はそのまま取り入れることも大事なことです。
    冗長な説明や技術用語を排除し、必要な情報を簡潔に伝えることに焦点を当てます。

     一般的には詳細な手順書・業務規定が従来からあるはずですから、それらもここで再整備し、品質マニュアルとの紐づけを確実にすればマニュアル自体の重厚長大化を防げます。
  3. ユーザー参加の促進:従業員が品質マニュアルの改造に参加し、フィードバックを提供できるようにすることが重要です。
    全員参加型で、その良否の責任も皆が受け持つことです。
    彼らの意見や提案を尊重し、マニュアルを彼らのニーズに合わせてカスタマイズしていきます。
  4. インタラクティブな形式の採用:テキストだけでなく、グラフィック、チャート、ビデオなど、多様なメディアを駆使して品質マニュアルに関わる情報を提供することで、従業員がより直感的かつ好意的に理解しやすくして、使用頻度を上げましょう。
  5. プロセスフローに沿った構造:QMS規格要求事項順の表現形式から極力脱し、実際のプロセスの流れに沿った構造を大胆に採用しましょう。
    従業員が日々の業務にマニュアルをそばに置き使いやすくなります。
    また組織全体のIT化が進んでいるならば、ノートPCやタブレットで気軽に開ける品質マニュアル望まれます
  6. 定期的な更新と改善:従業員からのフィードバックを積極的に吸い上げ、それを元に品質マニュアルや業務手順書などを定期的に見直し、継続的な改善を進めなくてはなりません。
    従業員が使いやすく、効果的なマニュアルを維持するための改善プロセスを定着させるべきです。

 これらの改造手順を通じて現実の業務と整合性の取れたフレキシブルな品質マニュアルが最も製品品質・業務品質・経営品質に効果的に寄与し、組織の成功に貢献します。
その活用目的を明確に絞り、あくまでも道具としてどのような効果を期待するのかを十分に議論検討して再編集すべきです。

 品質マニュアルが文書保管棚の奥に仕舞い込まれている時代ではありません。

 現在、EMS(ISO 14001)認証をQMSと同様に取得している企業は相当数あります。
その場合、二つのMSをバラバラに稼働していると言うことはあり得ないでしょう。

 品質保証室と環境管理室のようその担当部署が各々存在するかもしれませんが、従業員の日常業務は一つなのですから、管理区分を厳密にするとかえって組織内の効率と効果が低減する恐れがあります。
この際、部署を統合し、一括管理にしましょう。
マニュアルも「品質・環境マニュアル」として再編集統合化するのはさほど難しいことではありません。
この方が自然と環境活動が業務に馴染むはずです。

 ポイントは「環境を良くすることは品質を良くすることになる」と言うことです。

 さらにQMSとEMSの審査機関が別々でしたら、審査機関もまとめてしまいましょう。
業界によって付き合いで審査機関を分けたと言う話を聞いたことがありますが、もはやそのようなことは時代錯誤以外の何物でもありません。

 審査機関を一つにまとめると、さまざまなコストダウンと審査日数の軽減が図れます。
多くの審査機関ではQMS及びEMSの両方をこなす審査員が多数いらっしゃいますから安心です。
組織の業務プロセスを品質と環境両面から捉えることで、効率的かつ効果的なマネジメントが可能になります。

 また労働安全衛生もマニュアルに加えることが可能です。
ISO 45001規格が
世に出ていますが、何もそのために認証取得をする必要はありません。
日々の業務プロセスに「品質・環境・労安衛」が一体になって溶け込んでいるからです。

 この場合、三位一体と改編したマニュアルの中に「本マニュアル内の労働安全衛生マネジメントシステムはISO認証対象外とする」と明記すれば、外部審査でトラブルになることはありません。
マニュアルは審査機関のためにあるのではなく、自社のためにあるのです。

 使いやすいマニュアルを目指すならば、究極は「品質・環境・労安衛」一体化です。
これにそれぞれの規格要求事項がそのまま出てきたら、それだけで読むのも開くのも嫌になるに決まっています。
そうではなく、日常の気軽な業務手引きになるよう、マニュアルを考えてみてはいかがでしょう。

(了)

                        By イソ丸研究所

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