ISOMS #005

 QMSであるISO 9001:2015には「品質マネジメント」なる言葉が所狭しとばかりに本文だけで82か所も頻出します。

 このQMSはそもそも誰が主人公なんでしょうか?
答えは言わずもがな、このQMSを動かす組織全員です。
決して管理責任者や特定のISO担当者ではありません。

 経営トップから管理職・一般職・現場を任された方々、そして派遣社員、アルバイト、パートの方々まで層厚く、幅広く、組織で仕事をこなす全員ですね。

 1987年に「製品品質」の保証規格からスタートしたこのシステム規格は、その後プロセス・アプローチの採用で「業務品質」も加わり、現在の最新版では「経営品質」もターゲットに加わっていると言われます。

 規格の度重なる改訂で、品質の解釈も変化しています。
組織の担当者によっては「経営品質」と称して経営まで口出すのはおかしい!と反論する方もいますが、前3項の石川馨博士の品質論をもう一度思い出してください。

 広義の品質として製品のみならず、仕事の質、サービスの質、情報の質、工程の質、部門の質、人の質、システムの質、会社の質等、これら全てが含まれると博士は述べています。
「品質管理の父」として、またTQCの先駆的指導者として崇敬された石川博士のこの哲学がその後のQMSの確固たる基盤になっていることを再認識しなくてはなりません。

QMSの祖は日本です。自信を持ちましょう!
「品質マネジメント」は、『品質管理』とも『品質運営管理』とも、また『品質経営』とも訳することができます。

 またそのQMSは、主に「管理技術」と「汎用技術」を駆使したシステム構成となっており、固有技術が規格の中に具体的な表現として出ていないことであらゆる産業形態への読み替え可能な仕組みになっています。
ISOMS #004でも掲載した3つの技術要素の図をもう一度ご覧になってください。

 さらにコンプライアンスとガバナンスも含まれることで組織全体(全社的)の管理となれば、単に製品品質だけの世界では無いことが分かります。
つまるところ、QMSは「経営品質+業務品質+製品品質を整え維持する仕組み」と言えます。

 それは環境を対象とするEMSにおいてもほぼ同様と言えます。
世界でも悲惨さでは稀な環境公害を産み出したからこそ、いち早くそれら環境公害除去に取り組み、類のない環境基本法を制定し、また国民全体がチリやゴミ回収、海山川の清掃に邁進したことで世界から称賛される国になったと言えます。
EMSがうまく機能しているのはそのような苦しい歴史背景があるからなのかもしれません。

 ところで、昨年末から世情を賑わせていたダイハツ工業と豊田自動織機における許されざる不正行為にそれぞれのマネジメントシステムは機能しなかったのでしょうか?
ダイハツ工業は、1998年に(財)日本自動車研究所 認証センター(JARI-RB)でJIS Q 14001(ISO 14001)の認証取得を果たしています。
豊田自動織機は2002年に(財)日本品質保証機構(JQA)からJIS Q 9001(ISO 9001)認証取得しています。

あくまでも想像上のイメージ図です

 前述の両社における品質のどこに問題があったのでしょうか?
事件に関わった方々は日々どのように自分の愛する製品の品質を考えたのでしょうか?
上記の二社がISO認証を受けていることはそれほどの驚きではないのです。
問題はこれらの意図的な犯罪行為を見抜けなかった外部審査システム、いやQMSそれ自体に強い危機感を抱かざるを得ないことです。

 このままで良いのでしょうか?ISO!

(了)

By イソ丸研究所

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