ISOMS衰退原因解決への道

原因解決の5ゲン主義! ISOMS#005
これまで4回にわたり、ISO認証返上4割の実態から垣間見えたISO衰退の原因を探ってきました。
今回はその衰退原因の解決が可能かを、考えてみましょう。
目 次
1. 四つの衰退原因の再確認
それにしてもISOマネジメントシステム(ISOMS)の認証返上が全体の約4割に及んでいるとは、今さらながら衝撃的なニュースです。
そこから見えてきたのは、以下4つの衰退原因です。
a. 組織体質が旧態依然としており、ISOMS改革がない
b. 外部審査を組織の重要なイベントと錯覚してしまっている
c. ISOMS維持部門が組織内で権威的・閉鎖的になっている
d. 経営トップがISOMSに対して関心を持続できていない
それでも、共通項を抽出し、現場レベルでの対処可能性を考えることに意味があります。
では、果たしてこの衰退は食い止められるのでしょうか?
解は「Yes」、ただし条件付きです。
その条件とは、まず「変えたいという意志」を組織が明確に持てるかどうか、です。
もし「もう認証など要らぬ」と決め打ちしているならば、変革の機は既に閉ざされています。
しかし、「このままではいけない」「何とか立て直したい」と願う声があるならば、その萌芽を火種に変えることができるでしょう。
2. 現場・現物・現実の三現主義
まず必要なのは、現実に即した状況把握です。
そのために有効なのが、現場重視の 「三現主義」と、基本の再確認である「原理・原則」です。
「現場」は製造・施工現場に限りません。
事務所・部門・営業所など、あらゆる働く場所を対象とします。
「現物」とは、モノそのものだけでなく、ISOMS文書や記録、監査報告、掲示資料なども含まれます。
「現実」とは、それらの維持・運用状態、担当者の意識や行動、部門間の温度差などを意味します。
目に見える書類、目に見えない人の思い。
その両方に目を向け、組織の今の姿を把握することが出発点です。
3. 原理・原則―二つの根本に立ち返る
「原理」は二重の意味を持ちます。
一つは、ISOMS規格自体が持つ構造原理です。
顧客満足を核に、PDCA、リスク管理、文書管理、人材育成などの要求事項が体系的に組まれています。
もう一つは、各組織が長年の営みの中で培ってきた独自の運営原理です。
理念、実践知、歴史、習慣が織り成す固有の仕組みです。
「原則」はその具体的なルール、手順、決めごとです。
ISOMSの要求事項と組織独自の手順書・ルールとの重なりを比較し、過不足を洗い出すことで、不活性の原因や衰退の兆候が見えてくるでしょう。
三現主義に原理・原則を加えて「五ゲン主義」と覚え、即実行しましょう。
4. 最大の難関―管理責任者と経営トップの意識
このような探索を実行するには、ISOMS維持部門、特に管理責任者の協力が不可欠です。
しかしながら、このポジションにある方は多くの場合、専門性も高く、経験も豊富です。
また、残念ながら“頑固”でもあります。
気がつけば組織内に小さな“教条主義国家”を築いてしまっていることも……。
それだけに、解決のカギは「自省と対話」にあります。
管理責任者が組織全体の声に耳を傾け、自らも原理・原則に立ち返って軌道修正できるかどうか。
さらに、トップの理解と後押しがあるか。
特に原因d「経営トップがISOMS自体にいつまでも興味を持たない」問題は深刻です。
トップの関心の有無が、全社の温度に影響するのは必定。
「認証は手段でしかない」とトップが口にした瞬間、部下たちも「じゃあ、形だけでいいか」となってしまう。
組織に巣食う同調性バイアスが、真の改革を阻むのです。
5. 最後に:皆が未来を描けるか?
組織の再建には、「過去の反省」ではなく「未来の構想」が必要です。
バックスキャン・シンキングの採用:
この思考法とは、到達すべき未来の状態から今を逆算し、必要な変化を設計する思考法で極めて有効と言えます。
ISOMSの認証返上に向かっているならば、その前に再考してください。
あなたの組織は、本当にすべてを諦めてよいのでしょうか?
いま一度、現場を、原理を、原則を、そして未来を見つめ直していただきたいと思います。
次回ISOMS #006では、この規格が生まれた事情を探ってみましょう。
了
By イソ丸研究所
※本記事は2024年執筆ですが、今回のブログ全面改装で再編集しました。