ISOMS #005

ほんとに解って活用している?

 今回の記事は、ISO 9001の主要元素とも言える品質について考察します。
意外とその元素構造を知らぬままに「品質が悪い」とか「品質管理がおかしい」とか簡単に言ってしまいがちですが、その原理原則について改めてここで考えてみましょう。
 それによって現在実行しているISO 9001のイソ活のあるべき姿が浮かんでくるかもしれません。

 その昔、わが国は「重厚長大」と言う特性で言い表わせられた産業群が日本経済をリードしていました。
「重い・厚い・長い・大きい」その製品とは鉄鋼・造船・重化学工業・非鉄金属・セメント及びそれらに関連する設備・装置・機器のことです。

 昭和30年代から徐々に敗戦国の荒廃した国土と経済を建てなおし、その成長ピーク時にはその技術と成果品が世界を席巻したものです。
その後の重厚長大産業のいずれもが国際競争力を失い、それらに代わって「軽薄短小」で表現される産業群にシフトしていきました。

 ただ現在までの身近な歴史において築き上げた高度な「技術力」はまだまだ健在です。
その高度な技術力の基盤を造り、支えたものがQC、TQCでした。

 QCとは“Quality Control”の略であり、TQCは“Total Quality Control”の略語であることはご存じですね。
そのまま訳せば「品質管理」及び「総合的(全社的)品質管理」となります。
ここからもう一つの発展形であるTQM(Total Quality Management)も出現します。

 主に戦前から発達した米国における品質管理活動理論であり、これらが日本の産業界に導入移転されたことで独自要素も加味され、大きく発展していきます。
結果として、高品質で安価な日本製品が世界市場を席捲し、「品質の日本」のゆるぎない地位を築き上げました。

 近年でも「重厚長大」と「軽薄短小」のそれぞれの長所を継承する日本車の評判は高く、代表格のトヨタは毎年販売台数世界一をキープしています。
そのトヨタの関連会社であるダイハツ工業と豊田自動織機がなんと不正行為を永年していたと言うのですから驚きです。
「ダイハツ」と言えば、小型車、軽自動車では老舗のメーカーであり、人気の車種を多く出しています。
現在はトヨタの完全子会社としてトヨタやマツダなどにも製品を供給しています。
かたや豊田自動織機は、トヨタグループの本家であり、源流に位置する由緒ある企業です。

 事件の詳細についてはまた他の記事で触れていきますが、これら名門と言える企業が組織ぐるみで長年の不正に関わっていたことに怒りを禁じ得ません。
しかし、我が国はこれまでも自動車業界において、広範に不正行為を起こしていたのも事実です。

WEB オルタナ編集部記事より借用しました。

 今回を含めて、事件が発覚したのは2000年代ですが、その多くが不正行為を20年、30年前から行っていたと言うのが驚きです

 もちろんこのような不正事件は我が国に限ったことではありません。
フォルクスワーゲン事件も有名ですが、韓国現代自動車傘下の起亜自動車も不正を起こしています。
だからと言って、不正が許されるわけがありません。

 それにしてもなぜ日本車メーカーで多発するのでしょうか?
まさかこれが日本のお家芸とか、日本人特有の性質だと思われては困ります.
日本経済を支え、また日本の高い技術力の象徴として誇りが持てる自動車産業のこれからの未来が不安です。

 冒頭から自動車業界の不正事件について話を切り出しましたが、自動車を含め、製品品質の高さでは世界でも比類のない地位を維持しているからこそ、「品質」とは何か?を考えるきっかけとしたかったのです。

 ところでISO 9001(以降、QMSと呼称します)は製品の品質保証からスタートしました。
そのために「品質」と言えば、「品物(=製品)の質」と認識していた方々が結構多くおられたように思います。
それだけでなく、品質管理の言葉に対しても同様に「品物の質の管理だ」と言う誤解もいまだにあります。
「これは大間違いです!」とまず述べておきます。

 品質と言う言葉はQualityの翻訳語ですが、このQuality自体は古代ギリシャの学者アリストテレスまでさかのぼり、彼は「質」と考えました。つまり状態の特性とでもいうものでしょう。
それに対して「量」はQuantityとされました。

 厳密に言えば、古代ギリシャ語と英語は異なりますが、親戚として後世そのようになりました。

 それでは「品」は?と言うと、品物の意もありますが、他方「品格・品位」の『品』であり、それ自体が持つ良性の高価値性を表してもいます。
結局、品質=Qualityと一般化されているのですが、両者には微妙な違いがあるそうです。
「品質第一」と表現されるように日本語の「品質」にはより良くする意識が流れています。
対してQualityには、ある基準を設けてそれをクリアさえすればOKと言うニュアンスがあるとされています。

 スポーツの陸上競技で例えるなら、オリンピック出場には絶対第一位で優勝する方法だけではなく、標準記録を超えれば出場枠に入れる方法もあるぞと言うことです。
つまりNo.1か、あるレベル以上か、の違いです。

 話が逸れました。
それでは「品質」が品物の質では無いのなら、何の品質でしょうか?

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