ISOMS #004
目 次
3.2 外部審査のためのISO・MSではありません
多くのイソ活組織では、初めての受審から認証取得後のサーベランス審査を通して審査機関を過度に権威付けしているように見えます。
当然ながら外部審査員に対しても過度に神経を使って、その一言一句をご宣託のように拝聴しておられる光景が今でも見られます。
昔と異なり、現代の?外部審査員はいたってフランクに接してくれるはずです。
クライアントである皆さんの組織に対してフラットな感覚で外部審査を行うよう徹底して教育されています。まあそれでも審査を受ける立場としては無用な不適合を出されたくないのか、お偉方も神妙に審査の成り行きを伺っています。
そもそもこれがおかしいのです。絶好のチャンスではないですか?
まず、不適合をどしどし出してもらいましょう。
「今回は不適合がありませんでした。」と言われてホッと一息入れるような管理職、経営層ならその組織に未来はありません。
理由は簡単!
- いくら払っています? 審査機関に。その費用対効果って何ですか?
- 不適合がないから組織のシステムが盤石だと思います?
- 何が去年より具体的かつ定量的に良くなったか、聞きました?
- 要求事項の解釈で真っ向から議論し、新たな知識を得ています?
重大な不適合がボロボロ出ては困りますが、何も見つからないことが最善の事ではありません。
なぜなら多くの場合、外部審査に向けて組織は隠れて様々な対策を講じているからです。
- 外部審査のために予行演習としての内部監査を行う。
- 外部審査前に集中して書類作りをひそかに?行う。
- 不適合を出さないようにと変な檄を飛ばす。
イソ活で認証を維持するために必死にこのようなことをすべきと、どの要求事項にあるのでしょうか?
これらは組織に「権威性バイアス」と「同調性バイアス」と言った認知の歪みなどを蔓延させ、共有化されている結果です。
このような無意識の環境下では、結局のところマネジメントシステムのルールを守ること自体に疑念を皆が抱きつつ仕事をするわけですから、組織のモチベーションが上がるわけがありません。
外部審査で守りの態勢に入れば入るほど、規格要求事項への違和感が高まります。
もうすでに認証取得を果たしているのですから、隠れて悪さをしない限り、その剥奪はありません。
顧客目線で組織を観察するのが審査機関なのですから、その客観性を味方につけて普段の仕事ぶりを診てもらいましょう。
その普段の仕事ぶりとは、一切のプロセスから外部審査を目的とした活動を切り捨てることです。
むしろ内部監査や諸々の検査、現場パトロールなどを徹底し、自らでプロセスやシステムの不備を日々見つけては小さくても改善を積み重ねていくことです。
そしてその成果を外部審査員に診断してもらいましょう。
不適合が出せない審査員は審査機関に替えてもらうぐらいの気概を組織は持つべきなのです。
これまで要求事項の解釈は審査機関やコンサルタント、それに関連文献から得た情報によるものでしょう。
その多くは間違いはないものの、ISO認証を得るための手練手管が少なからず含まれています。
場合により、そこまで規格要求事項には書かれていないものもあります。
具体的には帳票、手順書等ですが、外部審査員の何気ない一言で増えたりするケースもあります。
また審査機関の解釈と方針から指示が出される場合もレアですが、あります。
それらも含めてこれまでのQMS,EMSを見直し、業務や管理を軽くすることなどを考えていくべきでしょう。
規格要求事項の裏側は闇だけでなく、知恵の宝庫でもあるのです。
脳ミソを柔らかくこねくり回して発想の転換をし、良い意味で組織に都合の良い解釈を見つけましょう!
4. まとめ
今回は、イソ活に携わる方々にとっては鬼門とも言えるISO・MS規格の要求事項について、その成立からどう使いこなすかを概説しています。
日本がQC・TQCを用いていたころ、英国は国際規格の基としてBS-5750を定め、その後ISO 9001~3が正式な国際的なシステム規格となりました。
さらに「認定及び認証方式」の採用で、「購買者目線」での客観的評価の嵐に巻き込まれます。
当初の規格適合審査から「プロセス・アプローチ審査」方式に代わっていきますが、本質的には規格要求事項を守ることは変わりません。
システム規格では主として「管理技術」及び付帯する「汎用技術」の管理と行使が基本となります。
製品品質を作るプロセスを品質保証の確認のために行う「審査及び認証付与」では、厳密な判断基準が求められ、それが今でも我々を悩ます規格要求事項なのです。
認証取得&維持ならばISO・MS規格の読み替えには後々メリットに変える智恵が求められます。
大事なことは規格要求に振り回されず、組織内に隠れている要素の調査・発掘を綿密にすることです。
組織内に該当するルールが既に確立していれば乗換可能です。
また本来、ルールとは仕組み(=システムの骨格)の進行役であり、番人と言えます。
規格用語を従来使っていた用語や分かりやすい言葉に切り替えて、皆が守るべきルールとして表現し、業務に溶かしこむことが求められます。
もしも現在、QMSやEMSが以前のままでその管理システムが硬化し、組織の効率性を阻んでいると感じるのならば、その時が好機です。
また外部審査に縛られていたイソ活から抜け出し、審査機関の客観性を味方につけて普段の仕事ぶりを診てもらうべきです。
外部審査に多大な神経と時間を費やすより、内部監査や諸々の検査、現場パトロールなどを徹底し、自らでプロセスやシステムの不備を日々見つけて改善を積み重ねていくことです。
これまでのQMS,EMSを見直し、発想の転換で業務や管理を軽くすべきです。
規格要求事項の裏側は闇だけでなく、知恵の宝庫でもあるのです。
(了)
By イソ丸研究所