ISOMS #004
あらゆる事実には何らかの裏があるものだ。
目 次
はじめに
イソ活(ISO維持活動の略)に日夜、ご苦労されている皆さん、
今回はその基にあるISO・MS規格要求事項の裏側について考えてみましょう。
ところで皆さんの組織におけるISO認証取得時期はいつ頃だったでしょうか。
1994年に初めて改訂されたQMSをベースに認証取得した組織と、2015年の大改訂以降に認証取得を果たした組織ではだいぶ要求事項に対する感覚が異なるかもしれません。
ここでは二十年以上前からイソ活(ISO認証維持活動の略)を経験されている組織をメインに上記のテーマを考えてみたいと思います。
但しあくまでも認証維持下における要求事項の本意を守る義務から逸脱するつもりはありません。
また規格要求事項の解説をここでくどくどとするつもりはないので、どうぞお気軽に読み進めてください。
1. ISO・MS規格成立の裏事情
1.1 都市伝説? サッチャーの陰謀
ちょっとISO・MS規格の歴史を振り返ってみましょう。
今ではISO・MS規格、つまり「ISOマネジメントシステム規格」と称していますが、1987年の成立当時は『品質システム-設計、製造、据付け、付帯サービスの品質保証モデル(9001の場合)』と言う名称で、製品の不良率及びコストを下げるためのツールとして登場したのです。
その基は主にBS5750(Quality System)と言う英国の国家規格です。
ご存じの通り、世界の植民地支配を欲しいままにしてきた英国ですから、国際条約や国際規格などさまざまな分野における硬軟自在の外交手法などを通して自国の経済に有利となる術に長けています。
EC統合や国際貿易の関税障壁撤廃などと絡み合わせて国際気運を盛り上げ、まんまと自国規格BS-5750をISO 9001~9003に衣替えさせました。(当時は9001だけでなく業態のプロセスに応じて3種類あったのです)
日本はその頃QC、TQC全盛期で、世界から「製品品質世界一~!」と持ち上げられ、ISO 9001の成立と存在を誰も知りませんでした。
「鉄の女」と呼ばれた英国のサッチャー首相とそのブレーンはそーっと来日し、QC・TQCの実情をつぶさに観察し、「固有技術」や狭義の品質管理では日本には当分勝てないと分析したらしいのです。
結果として、あらゆる産業を通してイニシアティブを取るには単なる国際規格の一番手だけでなく、そこに認定+認証制度を取り込んで一層の権威性と独占性を付加させようと言う目論見が「一国認定機関」と「認証判定・認可=審査機関」の創設につながっていきました。
それまでの技術規格中心のISO規格に「管理システム規格」が加わることで、顧客側が取引先にその認証取得の有無を求めてきたから世界の市場は大混乱?に陥りました。
1.2 審査方式の変化
一時は「すわ!黒船来襲か!?」とまで騒がれたISO 9000’s:1994の出現で、わが国の製造業は大慌て!
ところが対応できる国内の審査機関もごくわずか。
その審査機関の外部審査員やISO内部監査員もこれまたごくわずか。
だいたいがその人達を教育する教育機関もさらにごくごくわずか…てな状況でした。
対応するJISQ規格は出来上がっていましたが、難解な文章の羅列で、規格解釈もISO原文重視主義を推奨されるものですから認証取得を目指す組織の方々には全くピンと来ないのです。
特に要求事項が『~~しなければならない(Shall~~)』の氾濫で、これまでにないその表現に関係者は大いなる戸惑いと果てしない恐怖を覚えたものです。
そうして規格内のあらゆる要求事項を守らせること、これが審査機関の絶対的使命になったのです。
現在でも世界中の審査機関は、被審査組織(クライアントとなる企業や団体など)の該当マネジメントシステムが継続して要求事項に適合しているか否かを審査し、判定することを目的に活動しています。
これを一般的には「規格適合審査」と呼びます。
しかし徐々にそのISO審査方法が変わっていきます。
2008年の9001規格改訂前後から「プロセス・アプローチ審査」に移行して、規格要求事項を組織なりの具現化させた活動とそのつながり(=プロセス)に着目し、組織が求める成果を出しているかを審査する形態に変遷したのです。
つまり、組織のプロセス各々がきちっと定義付けられ、互いに結びつけられて機能していれば、規格要求事項の言葉表現や文章表現通りでなくても問題とはせず、また実際に日常的活動としてそれらに合致するものが明示されるのであればOK!とする審査方式に切り替わっていきました。
組織の成立とそこでの諸活動が仮に何十年もの歴史を持つのであれば、既にその組織活動にはISO 9001の規定要求事項の事象が何らかの形で存在するであろうし、それをたった30年の歴史しかないISOシステム規格に何から何まで合わせることの方が理不尽なわけです。
とは言え、黒船が来襲した30年前はそんな理屈は通用しませんでした。
なにより世界は「グローバル・スタンダード」の建設に余念がなかったのです。
審査機関と言うよりそこから派遣される外部審査員がまず許してくれません。
その審査場面では種々の不可解な不適合が頑固な審査員から数多く出されました。
名だたる審査機関でも悪名高い?外部審査員がそれぞれおられたようで、そりゃあ、伝説的なとんでもない審査が時として横行していたのです。
現在はそのような審査員さんも絶滅危惧種として御隠退しているようですが、それでも時折り、新種の突飛な審査員が出現するようですね。
さらにその外部審査員が時に応じてコンサルタント稼業をするわけですから、偏った解釈が強制的に流布していきました。
これはたまったものではありませんね。
本来の業務システムまでもが変えられてしまう恐れがあるのですから。
(【2】に続く)