ISOMS #003

原因解決への道は険しいけれど……。

 前回までの第1話・第2話では、ISO認証返上4割の実態から垣間見えたISO衰退の原因を探ってみました。
ここではその衰退原因の解決は可能か、考えてみましょう。

 衰退原因には以下の4項目が挙げられていました。
a. 古い組織体質のまま、ISO・MSの改革が無い
b. 外部審査を組織の重要な中核イベントにしてしまっている
c. ISO維持部門が組織内で権威的・閉塞的になっている
d. 組織トップがISO自体にいつまでも興味を持たない

 もちろんこれらが原因の全てであり、核心であるわけではありません。
より深い根本的な原因が存在する可能性もあります。

 上記の4原因も、ある意味では状況経過の説明とも読み取れます。
それこそ「なぜなぜ分析」的にもう一歩探ることもできるでしょう。
それぞれの組織には特有の風土と歴史があり、経営トップの考え方、サポートする面々の意識など千差万別ですから、各組織の本質的な原因は自らの手で掘り下げていかなくてはなりません。

 とりあえずこれらは共通的な次元での原因と位置付けましょう。
大事なのは解決法の模索です。
ただし、それを必要としているか否か、は今後の行動への大事な分岐点です。

 「このままで良いのさ」と言う組織も当然あるでしょう。
現在はこのような問題も特に無い、ISOには期待していない、元々お飾りだから、と理由はいろいろとあり、問題外とされるならばこれは当然ながら不要のお話です。

 しかし、喫緊の課題とされている組織もおありではないでしょうか?
ここで大事なことは現実的な状況をつかむことです。
そのためには三現主義プラス原理・原則のいわゆる5ゲン主義にもとづいて皆で事実を把握し、その結果を共有し、討議して如何するかの方法を編み出すのが良策でしょう。

 三現主義はお馴染み「現場」における「現物」の「現実」を観察することでしたね。
「現場」とは製造現場や施工現場だけではありません。
各部門・部署、現場事務所などの執務状態も見ましょう。
書類の山で溢れかえっているかもしれません。

 「現物」は製品だけではありません。
イソ活で言えば、文書・記録類そのものや前述の「現場」でのそれらの保管維持状態、外部審査及び内部監査結果も記録を含めて現物に含めます。
マニュアル・要領書・手順書も大事なチェックの対象です。

「原理」と「原則」とは何でしょうか?

 曰く、「原理」とはモノゴトをなりたたせている法則及びそのメカニズムを指し、「原則」とはモノゴトの規則・決まりごとを指します。
でもこれでは分かりにくいですね。もう少し平たい表現に置き換えましょう。
それぞれ二つの局面があります。

 「原理」の一つは、ISO該当規格にあり、組織に求めるものです。
例えばISO 9001で言えば、『顧客満足』を目的にした組織内の整備すべき様々な仕組みです。
以下のような仕組みが規格内に格納されています。

 ・組織内外のリスク管理 ・方針管理、目標及び達成管理 
 ・改善サイクルを有するPDCA運用 ・是正処置及び予防処置 
 ・顧客管理から製品引渡及び維持までのプロセス管理 
 ・様々なパフォーマンス評価(プロセス内のチェック・各種検査・内部監査など)
 ・適材適所の人事管理及び教育システム ・文書及び記録管理 etc.etc

 これらは品質MSの大事な構成原理です。

 片やもう一つの原理とは、その組織が本来有している、あるいは有すべき最適運用システムです。
理念創出に始まり、製品品質・業務品質・経営品質の向上に向けて組織はそれぞれ長年の経営で培ってきた実績があり、それを支える仕組み、システムがあります。
それが組織固有の原理です。

 ただその多くは前述のISO 9001の各システムと共通しているはずです。
中には各々の仕組みに関し、個別的に要不要の論議もあるでしょうが、それも大事な観察結果です。

 それでは「原則」を考慮した場合、どうでしょうか?
「原則」とはモノゴトの規則・決まりごとでしたが、「システムあるいは仕組み個々の取り決め・決められた手順」と考えれば、これもISO規格要求事項と組織の従来の業務手順、経営ルールがほぼ重なり合います。

 もちろん過不足も出てきます。
規格要求にあって組織ルールにないもの、その逆もしかり。それを見つけましょう。
そこに現在のイソ活の不活性要因の一つが見つかるかもしれません。

 簡単な三現主義+原理原則の探求・観察法の説明は以上の通りですが、これを実施する前提は、原因cの「ISO維持部門が組織内で権威的・閉塞的になっている」の改革に伴ってのことです。
ただこれはなかなかの難問です。
なぜならISO維持部門の長はいわゆる品質または環境管理責任者であり、組織内の立場も高く、頭脳明晰、でありながら頑固なんて方が結構いらっしゃる。

 この方、下手をするとISO原理主義的な傾向を有するのですが、そうでなくともその部署のメンバーも管理責任者に影響されて、発言が似てきます。
それが積み重なると他部門とのギャップが生じ、結果的に権威的、閉鎖的になってしまいます。
このような背景はまれかもしれませんが、要は管理責任者ご自身から行動を起こさないことには状況は打開されません。

 逆に上記cの原因が解決されれば、他の原因であるaの解決もたやすいことでしょう。
原因bの『外部審査を組織の重要な中核イベントにしてしまっている』については、外部審査そのものの捉え方を再考する必要があります。
この問題には組織トップ及び管理責任者に植え込まれた先入観それ自体を変えなくてはなりません。

 『組織トップがISO自体にいつまでも興味を持たない』と言う原因dは、上記原因b以上に厄介な問題です。
ややもすれば組織トップの性格やポリシーに触れる部分には誰しもアンタッチャブルで、関わりたくは無いでしょう。

 したがってトップご自身がその原因に立ち向かわなくては解決の道はありません。
仮にこのブログ記事を組織トップの方がご覧になり、「自分がISO再興、再建のために立ち上がろう!」と一念発起するのであれば、一つ手はあります。

手前味噌ですが、本HP内のLIBERTAS WORKにある「ISO建てなおし隊本部」を覗いてみてください。

 またISO建てなおしのための解説書として6冊の電子書籍Kindle版がLibertas Booksに紹介されています。
お気に召したらそれらをご一読いただき、どうぞISO再建の指南書としてお使いください。

 横道にそれて宣伝PRとなってしまいましたが、ISO・MS導入はそれ以降の組織における活性化と効率化、並びに利益化を推進するものでなければ意味がありません。
ISO認証返上と言う最終局面まで至らずとも、現在イソ活運用でお悩みであれば、より深く、より広い状況分析に基づいて組織の全階層を巻き込む議論が必要です。

 その前提は、確固たる『未来』のあるべき姿を共有することです。
その未来には組織自体はもちろん従業員と利害関係者全てが含まれます。
未来の到達点に対し、今ここから何が必要なのか、どうすべきか、を描いていく「バックスキャン・シンキング」で解決していきましょう。

 さて次からはガラリと趣向を変えて、ISO認証下で行われている不可思議な出来事や「こんな解釈じゃあダメですか?」などをテーマに勝手気まま・へそ曲がり的視点で綴っていきます。
よろしくお付き合いください。

By イソ丸研究所

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です