ISOMS #002
ISO衰退原因 が見えてきたような!
目 次
1. 二つ目の原因 b.を考える
前回第1話では、ISO認証返上の主たる理由の元となる四つの原因のうち『a. 古い組織体質のまま、ISO・MSの改革が無い』について考察してみました。
第2話の今回では、残りの以下の3原因についても続けて考えてみましょう。
b. 外部審査を組織の重要な中核イベントにしてしまっている
c. ISO維持部門が組織内で権威的・閉塞的になっている
d. 組織トップがISO自体にいつまでも興味を持たない
そこでまず二つ目の原因b.から始めます。
b. 外部審査を組織の重要な中核イベントにしてしまっている
ISO 9000sが日本に上陸した当時から外部審査機関が果たした役割は非常に大きなものでした。
この審査機関を通して第三者審査が無ければ、その後の他のマネジメントシステムを含めて我が国の産業界は国際化が十分に行き渡らなかったかもしれません。
確かに30年前当時の日本の産業パワーは品質面で世界のトップでした。
QC及びTQCで培ったテクノロジーは世界でも群を抜いていたと言えましょう。
でもマネジメントが脆弱でした。
管理技術に顧客目線が不足していました。
それを思い知らせたのがISO・MS規格の襲来です。
その主役を担ったのはISO認証を付与する審査機関そのものでした。
多くの組織はそこから改めて国際標準のマネジメントシステムを学んだと言っても過言ではありません。しかし、その審査機関といえどもそこに集結した外部審査員が全て技量・人格併せ持つ優秀な面々かと言えば、それには多少同意しかねます。
もちろん大多数の審査員はISO・MSの持つ素晴らしい本質を理解し、審査に生かしていました。
それは現在でも変わらぬ良い点と言えるでしょう。
逆に認証取得に励む組織側から見れば、外部審査員は絶対的な権威者ですから、その審査から導き出されるISOの解釈とそれを用いた方法論は崩せません。
これまで自社になかった仕組み、システムがISO規格要求を満たしていることを評価されれば、それは喜び以外の何物でもありません。
通常、ISO認証取得後は3年ごとの更新審査があり、そのはざまに毎年サーベランス審査を受けます。
規格改訂が発生すれば、それへの組織側対応度合いはサーベランスの中で評価されます。
また認証範囲を拡大したり、対象を増やせばそれらの規模に応じて審査が追加されます。
このようにいつのまにか組織活動の中に外部審査の比重が増していくと、それが大きな業務イベント化し、多様な影響が日々の業務活動に出てきます。
最も大きな影響を受けるのがISO内部監査です。
ISO 9001であれば「内部品質監査」であり、14001であれば「内部環境監査と俗称されます。
この内部監査が次回の外部審査対応の道具と化します。
いずこの組織も外部審査で不適合を出したくない、という同調バイアスである集団心理が働き、不適合発生を防ぐために内部監査を使うことが堂々と行われていきます。
全てが外部審査対応のため、認証維持のためとして妙なISO至上主義が横行し、手段と目的の取り違えが組織を蝕んでいくことに誰も気づきません。
組織業務の柱としてISO・MSを導入し、これまでの歴史ある組織活動と融合させてイソ活として一本化していくはずが、本来業務と外部審査用ISOが二本立てに変化してしまいます。
結果的にそれらが日常化すると、組織内にイソ活への不信感と厭戦気分が広がり、結局ISO導入の成果が経済効果に現れず、認証返上へと歩むことになります。
これがISO返上理由にある「ISO審査対応の不備」の原因です
内部監査や外部審査で不適合が無い=システム稼働良好、と言う結果に反するとはいかにも皮肉なことです。