LIFE #006
目 次
はじめに
前回まで3回にわたって百歳人生を能動的に生きていくために多少固苦しいですが、「生活」と「仕事」の面で自堕落を防ぐフレームワークについてお話をしました。
その方法としてはシンプルかつ馴染み深いものとして5S+PDCAの2サイクルをお奨めしました。
もう始められた方、いらっしゃいますか?
その日、その季節を自然体に暮らしていくためには、毎日が静かなリズムを基調とした音楽的旋律を自身の中に奏でたほうが楽です。
と言って、これに音楽的才能は特に必要としません。
ごく自然なリズム感が2サイクルの生活感を豊かにしてくれるという意味です。
ところで5SやPDCAはどこから始めても、どれをピックアップしても基本的には構いません。
これからあなたが始める思考、あるいは行動にメリハリをつけることが大事なのです。
それが脳に刻み込まれて次のアクションに連携していきます。
今回は、百歳人生を切り開くための「資源」の探査をお話していきましょう。
はて「資源」とは?
仕事に追われていた若い頃、「経営資源」と言う言葉を聴かされましたね。
また経営層ならば常に企業の経営資源が現状どのような状態か?を自問自答したはず。
俗に「ヒト・モノ・カネ」と言われたものです。
これはこれからの百歳人生においても無視できない大切な事柄です。
今回は皆さん自身の有する「資源」を探査することにしましょう。
1. そもそも「経営資源」とは?
詳細な解説をここでするのはいささか筋違いなのですが、基本知識の確認はしておいたほうが後々話が分かりやすいと思いますので簡単な説明をしておきます。
ご存じの方はサーっと流してくだされば結構です。
1-1. その定義と要素
経営資源は、企業・組織が成長・発展するために経営上必要な資源(リソース)の総称を言います。
以前は「ヒト・カネ・モノ」の3種類でしたが、現在ではそれらを含めて以下の6種類が経営資源とされています。
① ヒト:従業員、経営者、管理職などの人材
② モノ:設備、機械、原材料、在庫製品、商品など
③ カネ:売上金、運転資金、設備投資資金、研究開発費など財務経理関連
④ 情報:顧客情報、市場情報、技術情報、社内情報など
⑤ 時間:商品開発、顧客対応、意思決定などにかかる時間、納期,工期
⑥ 知的財産:特許、商標、著作権、種々の手順、ノウハウなど
1-2. 簡単な歴史
「ヒト・カネ・モノ」の3要素を経営資源の概念として体系的に確立したのは、日本でも絶大な信奉者がいるピーター・ドラッカーです。
彼が1954年に著した『現代の経営』で、三つの経営源を有効に用いることで、組織の収益性と競争力を向上できると説きました。
その後、経営資源の考え方に「情報・時間・知的財産」が加わりながら、生産や建設などの工業分野を超えて、現代経営の礎的な概念に発展しました。
現状の経営資源を測り、どのような配分にすれば、組織の成長が見込めるかは経営者の基本的手法と言えます。
2. 自分自身が持つ「活用資源」を探査する
現在、経営者であるとか、まだまだ現役だ、と言われる方々にとって、経営資源は日夜頭を悩ます課題であり、より深い分析と将来の洞察が必要となるでしょう。
ただ「百歳人生」を進む方々にはそこまで難しく考えずに、人生における「活用資源」と置き換えて考えていくことにしましょう。
それでは「経営資源」はどのように『活用資源』に置き換えられるのでしょうか?
a. ヒト:組織ではなく、自分及び密な関係者(家族・友人・近隣など)
b. モノ:日々の衣食住に関わるもの、有形・無形の趣味・収集品など
c. カネ:資産や預金、年金、給与、報酬などの収入と、支出全般
d. 情報:日々の生活や仕事で必要な情報全般(情報源を含む)
e. 時間:自身の生活/仕事時間(24時間の利用術)、寿命(百歳まで)
f. 知的財産:自身の特許、商標、著作権、書籍類・資料、レコード・CD
全てに共通していることは「自分自身」をコアにした人生の中で元々有しているもの、外から得られるもの、だと言うことです。
但し、百歳人生では、むやみやたらにこれらを買い増しすることを目的としていません。
むしろ気張らず頑張らず適度な量で、あるがままに自然にこれら6つの資源を上手に活用し、人生を楽しむことが求められます。
それでは身の回りからこれらの資源を見直してみましょう。
そして何が活用でき、何が不要か、何を守るべきか、いろいろな観点で6つの資源要素を洗い出してみましょう。
これは断捨離にもつながりますし、これからの人生への展望にも寄与することです。
臆せず、面倒がらずにやることが大事です。
3. 百歳人生をより明るくする資源量は?
次回の「LIFE #007」から2回にわたって『百歳人生の心得』について述べていく予定ですが、その中に「吾唯知足」と言う言葉が出てきます。
既にご存じの方もおられるでしょう。
「吾(われ)唯(ただ)足(た)る〔こと〕を知る」と読みます。
京都の有名な禅寺「龍安寺」を訪れると、境内のどこかでお目にかかることができます。
探して見てください。
素敵な場所にひっそりとありますよ。
意味は「何事も欲張らず良い加減で満足し、不足不満の気持ちを抱かない」ことです。
この言葉が6つの活用資源の量に対する端的かつ再受容な提言であり、目安でもあります。
定量的な数値は言えません。
なぜなら各々の置かれている環境が違うからです。
したがって定性的な視点で、それぞれの活用資源を見ていきましょう。
a. ヒト:基本は自分一人です。ここが原点です。
愛する者、信じ合える者がごく少数でもいればそれで充分です。
多くの疎遠な友人・知人はむしろ不要です。
ただし隣近所や同好の士(サークルなど)は生活を維持し人生を
楽しむためには大事な資源です。
b. モノ:家に物で溢れかえっている生活にはもう見切りをつけましょう。
また若い頃からの収集癖で一途に溜め込んだ物なども同様です。
美術館や博物館をやるのなら周囲の賛同を得られるでしょうが、
そうでなければエッセンスだけに絞り、
他は勇気を持って処分しましょう。
あの世に持っていける物質は何一つ無いからです。
c. カネ:資産や年金、給与、報酬などの収入は今後も自分を養うための
大事な資源です。
とは言え、無理に増やすことは逆作用もありますから、
欲に捕らわれはいけません。
問題は支出とのバランスです。
この支出管理は精神的エネルギーを多く費やします。
生活全般への自己管理が鍵になります。
人は収支バランスに合わせてその生活レベルをたやすくは
変動できないからです。
d. 情報:情報は生活や仕事に応じて適度かつ的確に収集しましょう。
高齢化するに従って収集及び解析能力と気力が失せていき、
世間と隔絶しては困ります。
しかし朝から晩までぼーっとTVの前にいるのは問題外。
現在の自分に必要な情報とその手段の選択が問われます。
NETや図書館など多様な情報源に積極的にアプローチ
して脳と心をリニューアルしましょう。
e. 時間:百歳までの寿命が大事ですが、健康で過ごせる時間は
自分で作るしかありません。
また1日の生活時間管理も大事です。
5S+PDCAサイクルを有効に使いましょう。
リズミカルで軽めの節度と節制で一日、一週、ひと月を
過ごすことが大事です。
f. 知的財産:製造・制作・著述・絵画・音楽などを仕事や趣味で
続けているのなら、それは大いなる知的財産を内に
秘めていることになります。
出来るなら積極的に特許、商標、著作権に挑戦し、
世界に公表しましょう。
でも有限な資源である「カネ」をむやみに注ぎ込む
ことではありません。
本にするならKINDLE出版で電子書籍の手があります。
ただし莫大な収入は望めませんが、あなたの名前が
ほぼ永遠に残り、読んだ人々を幸せにするはずです。
いかがですか? 百歳人生における6つの活用資源。
見直してみましょう。洗い出してみましょう。
意外なものが見つかるかもしれません。
逆に足りないものがあっても無理して増やす必要はありません。
これから新たに何をするかでそれも変わってきます。現状を把握するところから人生は始まります。
まとめ
百歳人生を目指すためには、さまざまな資源が必要だと言うことがご理解できたでしょうか?
個人個人の今置かれた状況は千差万別、百花繚乱ですね。
仕事をしているか隠居中か、家族がいるか独り身か、健康か否か、50代か70代か、などなど。
ただ現状がどうであれ、「百歳人生」に挑むなら、最後は一人だと言うことを受け入れ、覚悟しましょう。
そして有限の活用資源を上手にやりくり算段する知恵、何かに挑戦する気力・体力を養いましょう。
仮に資源が豊富にあっても不幸な使い方しか知らない御仁もいるし、何もないに等しい状況でも楽しく明日を切り拓いている方もいる。
それこそが人生です。
次回「Life #7」は「百歳人生の心得」です。
了
By 百瀬 代次郎