ISOMS #001

ISO衰退の原因は何だろうか?

 「はじめの一歩」でも述べた通り、 約4割強の組織がJAB認定のISO認証を止めてしまいました。
それだけではありません。
品質や環境以外のISOマネジメントシステムへの認証登録数もさほどに増えていません。

つまりわが国では現在ISO認証制度そのものが衰退低迷する事態になっています。

 誤解されては困りますが、筆者はJABやISO審査機関の宣伝広報マンではありません。

いわんやISO認証取得をなりふり構わずお勧めするコンサルタントでもありません。

 1994年当初からISOコンサルタントとして様々な企業様の認証取得と維持活動の支援をなりわいにし、ISOの栄枯盛衰?を見てきた立場からの意見です。

心配なんです。 ISOでおまんまが食えなくなるから?

 いいえ、そうじゃありません。違います!
ISOがいまだに正しく理解されていないまま衰微していくのではないかと懸念しているからです。

 とはいえ、ここでは筆者自身のコンサル稼業から少し距離を置き、若干の客観的視点でISO認証システム衰退の原因を考えてみましょう。

ISO返上の主な理由とは?

 ネットやヒアリングなどを通していろいろ調べてみると、ISO認証を返上した組織が漏らすその主な理由には次の5点に集約されるようです。

 ア) 文書・記録類作成の手間・負担増
イ) 業務そのものの負担増
ウ) 当初の期待効果の失墜
エ) ISO審査対応の不備
オ) 高額な審査関連費用・維持費用

 これらには共通項として結果的には経営的・経済的両面での『投資対効果』が期待通りではなかったことを反映しています。

反面、「ISOMSが定着したから」「外部要求などの保有理由が無くなった」と言った理由でのISO認証返上もあります。

 ところで上記のネガティブな返上理由の裏にはそれらの原因となる深い事情が隠されているはずです。
ISO導入により相対的に業務が増えたことはア)とイ)から分かります。
エ)は審査機関との関係性よりも、その審査に対する組織側の対応活動によるものでしょう。

 ここ30年でISO規格自体がだいぶ変わりました。それに伴いその解釈に対して審査機関の方針及び姿勢も大きく変化しています。
むしろ受審側の組織が以前と変わることなく、この外部審査というイベントを過剰評価しているきらいが見られます。
それゆえ多大な時間とエネルギーと神経を注いでしまい、本業にまで大きな負担を掛けてきたことがそのままISO返上につながっているのでしょう。

 結果的にはア)・イ)・エ)がウ)の伏線となり、ISO認証取得当初の対内外への目論見が消えてしまい、費用対効果で考えてもメリットが無いとの結論からオ)の事情につながっているとも考えられます。

 結論から言えば、上記五つの主たる理由の元には次のような四つの原因のいずれかが受審側組織にあるのではないでしょうか。

  1. 古い組織体質のまま、ISO・MSの改革が無い
  2. 外部審査を組織の重要な中核イベントにしてしまっている
  3. ISO維持部門が組織内で権威的・閉塞的になっている
  4. 組織トップがISO自体にいつまでも興味を持たない

 どうでしょうか? 
5つの理由はこれらの上記4つの原因からさまざまな事象が派生し結果となったものと考えられます。
いわば両者は「因果関係」にあります。

 それではこの4つの原因から組織ではどのような状況で5つの理由に陥ったか、を見ていきましょう。
現在ISO維持活動に励んでおられる組織にとって参考になれば幸いです。

 既にISO返上した組織はもちろん後戻りはできませんね。
しかし、返上しない組織は今からでもその危険性を回避できます。
確かにリスクはありますが、より良いISO維持活動(ここからは「イソ活」と言います)へ舵を切っていくことができると考えられます。

原因1:古い組織体質のまま、ISO・MSの改革が無い

 本格的にISOマネジメントシステムが世界に国際標準として形を整えて登場したのが30年前。
その当時は認証取得に挑む組織もさることながら、審査機関も外部審査員も皆が小学一年生同様だったのです。
教育機関もISOコンサルも同様の状況でした。

 そこからISO 9000s取得組織が増加し数年後にはISO 14001も登場し、品質及び環境がマネジメントシステムの両輪として普及していきました。

 しかし、ここで現在につながる次のような問題が当時には既に出てきたのです。

ⅰ. 規格にどこまでも忠実な解釈
ⅱ. 画一的な表現の品質及び環境マニュアル
ⅲ. 膨大な文書と記録様式の作成及び保管

《ページ2に続く》

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です