脊柱管狭窄症との100日戦争

背骨を通る神経束を守れ!

年の瀬も押し迫ったある日。
珈琲豆を自家焙煎するために、自宅のリビングはその小道具で散らばり放題。

私は永年の趣味の道具に足を取られ、転倒してしまいました。
つまずき、ぐらつき、そしてゆっくりと仰向けに倒れていく自分が分かりました。

でも咄嗟の防御姿勢がとれない。

言うなれば「受け身」ができなかった――ただ、それだけのことだったはずなんです。

だが、それがすべての始まりでした。

遠い昔、「椎間板ヘルニア」を患い、完治することなく騙しだまし使っていた体。

それがある日、そのことも災いし、「脊柱管狭窄症」になっていたのです。

学生時代は体育会系で、それなりに体を鍛えてもいたのですが…。

気にかかっていた「脊柱管狭窄症」が、再び牙をむいたのです。

腰の奥や片足のしびれ、背中に走る激痛、あるいはじわじわと全身に広がる鈍い痛み。
やがてそれは、歩行だけでなく、睡眠すら困難にさせる絶望的な痛みへと変わっていきました。

年が明け、世は新たな気配に包まれる中、私はただ、痛みと共に日々を耐えていました。

どうもこれまでとは違う痛みの程度に、ようやく気持ちに焦りが出てきました。

ようやくの思いで歩く姿勢は大きく前かがみになり、手すりや壁をつたいながら、そろりそろりと進む。

脚が動くたびに激痛が脳のてっぺんまで貫き、呼吸すらできぬありさまです。
立ち上がる、椅子に座る、ベッドに横になる、何から何まで動くたびに襲い来る激痛。
「いま無理に動いたら、次の1時間は地獄だ」と、そんな見えない計算を常にしながらの生活。

心もまた、少しずつ蝕まれていきます。

「これはもう、手術しかないかもしれないな。」
悲観的にそうつぶやいたのは、2月の終わり頃だったでしょうか。

3月に入り、安静にしていたせいもあり、それまでの激痛が多少は癒えてきました。

私は意を決して専門クリニックを訪れました。

そこで撮影されたMRI画像が、すべてをもの語っていました。

脊椎の第4、第5番――まるで圧迫骨折のような状態で、神経がしっかりと圧迫されていたのです。

それは、だいぶ昔に患った「椎間板ヘルニア」の部位でした。

「ああ、やっぱり…」という納得と、「これはまずい」という焦りが同時に押し寄せてきました。

担当してくださった若く優しい担当医師の診断は、
「手術までは必要ありません。ただ、このままでは歩行が危険です。まずは薬で痛みを抑えて、生活を立て直しましょう。」

*脊柱管狭窄症とは…

脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)は、脊柱(背骨)の中心にある脊柱管が狭くなり、その中を通る神経や脊髄が圧迫されることで、さまざまな症状を引き起こす疾患です。

この状態は主に加齢による変化によって発生しますが、遺伝的な要因や外傷、その他の疾患が原因となる場合もあります。

そもそも脊柱管の空洞自体が1~2ミリ、そしてそこを走る神経の太さはそれより細いわけですが、その神経束が圧迫され、種々の問題を引き起こします。

脊柱管狭窄症の主な原因は次の通りです:

  1. 加齢による変化
    • 椎間板の劣化や変性により、椎間板が膨らんだり、骨棘(こつきょく)が形成されたりします。
    • 椎間関節の肥厚や靭帯の硬化が進むと、脊柱管の空間が狭くなります。
  2. 遺伝的要因
    • 生まれつき脊柱管が狭い人もおり、このような場合は若い頃から症状が現れることがあります。
  3. 外傷や事故
    • 骨折や脱臼が原因で脊柱管が狭くなることがあります。
  4. その他の疾患
    • 腫瘍や感染症、炎症性疾患などが脊柱管を圧迫する原因となることもあります。

私が発症した原因は、#1の加齢による変化 と#3の外傷や事故の複合形ですね。

そして処方されたのは、5種類の薬でした

  • 鎮痛薬(痛みを抑える):プレガバリンカプセル75mg
  • 抗炎症薬(神経の腫れを抑える):ロキソプロフェン錠 60mg
  • 筋弛緩剤(腰周りの緊張を和らげる):チザニジン錠 1mg
  • 血流改善薬(神経への栄養を届ける):リマプロストアルファデクス錠 5㎍
  • 胃薬(上記薬の副作用を和らげる):ムコスタ錠 100mg

これらの薬が、まるでそれぞれの戦闘部隊のように、私の身体という戦場へと送り込まれました。
経口薬としてこれほど多くの薬をこれまで毎日の朝昼晩に飲んだことはありません。

「薬効という名の軍勢が、痛みという敵を四方から囲む」――まさに“包囲戦”です。

薬を飲み始めてからも、すぐに痛みが消えたわけではありません。

投薬そのものの不安と、これで痛みが除去できるのかという不安が交差します。

体内というか、患部での一進一退の戦況に、私はもどかしさを感じる日々が続きました。

服薬して一週間が経つ頃。
ふと気づけば、あの鋭い痛みが薄らいでいるではありませんか。

立ち上がる時、寝返りを打つ時、歩みを進める時などの激痛が和らいでいきました。

様々な恐怖も和らぎ、歩くスピードも、少しずつ元に戻ってきました。

歩きながら、私はひとり、心の中でつぶやいたものです。
「歩けることは、奇跡なのだ。健康で過ごすことは、宝物なのだ。」

何気ない不断の日常生活でのささいな一つ一つが大事であり、
いまの私にとっては、生きる力そのものとなっていることを実感させられる出来事でした。

もし、これを読んでいるあなたが、いま、腰や足の痛みと戦っている最中であるなら――私は、こう伝えたい。

「諦めてはいけない」と。

痛みは、心をも痛めつけます。
しかし、適切で正しいと考えられる治療があれば、必ず回復の糸口は見えてきます。

もちろん、今回のような薬剤による治療法は根本的な解決にはなりません。

根本的とは、脊柱管の狭窄が解消するわけではありません。

あくまでも激痛からの快方であり、運動機能の回復が目的の解決法です。
それでも痛みにあえぎながらの寝たきり生活よりよほど幸せであることは言うまでもありません。

私がそうであったように。

そして今――私は、再び歩いています。
ほんの少し背筋を伸ばして、前を見ながらですが。

*脊柱管狭窄症の治療法は、症状の重さや患者の状態によって異なります。

主な治療法を以下に示します。

1.保存療法

軽度の症状の場合、保存療法が選択されます。

  • 薬物療法:これが今回の治療法でした。
    • 痛みを和らげるための鎮痛薬や消炎薬が処方されます。
    • 神経痛を抑える薬も使用されることがあります。
  • リハビリテーション:無理をしないで少しずつ。
    • ストレッチや筋力強化運動を行うことで、姿勢改善や痛み軽減を目指します。
  • 装具療法:症状がひどい場合の副次的方法のようですが。
    • コルセットやサポーターを用いて、腰や首の負担を軽減します。

2.注射療法

保存療法で効果が不十分な場合、神経ブロック注射が検討されます。これにより、痛みを一時的に軽減することが可能です。

3.手術療法

重度の場合、または保存療法で改善が見られない場合には手術が必要となることがあります。

  • 減圧手術
    • 圧迫されている神経を解放するために、骨や靭帯の一部を除去します。
  • 脊椎固定術
    • 脊椎の安定性を高めるために、金属プレートやネジを使用して固定します。

予防策も実は大事で、習慣化することがポイント!

脊柱管狭窄症を完全に予防することは難しいですが、以下の方法でリスクを低減できます。

  1. 正しい姿勢を保つ
    • 座る、立つ、歩く際に背筋を伸ばし、腰に負担をかけない姿勢を心がけましょう。
  2. 適度な運動を行う
    • ウォーキングやストレッチを日課にすることで、筋肉を強化し柔軟性を保つことが重要です。
  3. 体重管理を行う
    • 適正体重を維持することで、脊椎への負担を軽減します。
  4. 定期的な健康チェック
    • 早期発見のために定期的に医師の診察を受けることが推奨されます。

脊柱管狭窄症は、適切な診断と治療によって症状の進行を抑えることが可能です。

軽度の症状であれば保存療法で十分改善が期待でき、重度の場合でも手術療法で快適な生活を取り戻すことができるようです。

加齢とともに発症リスクが高まる疾患であるため、早めに予防策を取り入れ、日々の生活習慣を見直すことが重要です。

不調や予兆を感じたら早めに医師に相談しましょう。

人それぞれの肉体的特性がありますが、今回の薬物療法は効果的でした。

ただこれもいつまでも服薬すべきではないような気もしますが、服薬を止めたら、また痛みが戻ってしまう不安もあります。

症状が悪い場合は手術療法の選択肢があるでしょうが、術後の再発不安が無いわけではありません。

出来れば、薬物療法とリハビリで乗り越えたいものですね。

なにしろ痛みは、それだけでもストレスフルな生活を招き寄せます。
さらには家族や周りの人達にもストレスや手間が増え続けます。

自分の体と注意深く対話しながら、より良い時間、そして素敵な人生を過ごしましょう。

参禅寺源吾

 

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