プロセスアプローチを知らずして、品質は語れない!

プロセスアプローチ再認識(前編)  ISOMS #014

今回及び次回の二回にわたり、「プロセスアプローチ」について解説致します。

まず本ブログでは、プロセスアプローチの基本を理解しましょう。

「過程が大事か、結果が大事か?」

そんな議論は、まるで永遠のテーマのように様々な状況下で語られます。

 

しかし、ISOマネジメントシステム(ISOMS)の世界においては、それは“二者選択”ではなく、“統合”です。

なぜなら、そこには「プロセスアプローチ」という強力な思考様式があるからです。

この「プロセスアプローチ」、ISO 9001の世界においては2000年版で初登場し、2015年改訂でその存在感がさらに高まりました。

しかし多くの現場では、用語としても思考としても、依然として“空気”のように見過ごされているようです。

それは、大きな機会損失であり、品質事故や管理不全の温床となりかねないことを理解すべきでしょう。

まず、言葉の定義から。

プロセスとは、「インプット(資源や情報)をアウトプット(成果や結果)へと変換する、一連の活動単位」です。

これを視覚的に捉える代表的なツールが、「タートルチャート」です。

プロセス本体(コア)を中心に、その周囲に人材・設備・手順・指標などの“手足”を備えることで、構成要素が一目瞭然になる構造です。

その名の通り、亀の形に見えるためにそう呼ばれています。

この構造の優れた点は、単なる業務の流れだけでなく、「成果を生む条件」までも可視化できることです。

つまり、「誰が」「何を用い」「どのように運営して」「何をもって成功とするか」が明確になります。

この“構造認識”こそ、プロセスアプローチの根幹。

問題が起きたときに、単なる結果論ではなく「構造上の欠落」に目を向けるための“地図”なのです。

では、ISO 9001規格ではこのプロセスアプローチをどのように位置づけているのでしょうか。

冒頭の「0.3 プロセスアプローチ」の項目は、規格の要求事項ではなく、あくまで“理念”の章です。

しかしながら、その理念を具体化する要求事項が、「4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス」に記されています。

そこでは、以下のような項目が明記されています。

必要なインプットとアウトプットの明確化(=成果定義)

・各プロセスの順序と相互作用の特定(=フロー認識)

・判断基準・手順の設定(=再現性の担保)

・利用すべき資源の特定と整備(=持続可能性)

これらは、タートルチャートの構成要素そのものであり、単なる管理ツールではなく、“規格対応の土台”でもあるのです。

とはいえ、こうした知識を持っていても、現場で問題が絶えないのはなぜでしょう?

それは、「実態と構造が乖離している」からです。

紙の上では完璧に見えるプロセスでも、実際の運用では次のようなズレが生じていることが多いのです:

・手順書通りに運用されていない

・指標が設定されていない/されていても活用されていない

・担当者が変わっても、引き継ぎが曖昧

・必要な設備・情報・人材が現場に届いていない

これらはすべて、タートルチャートの“手足”部分である「プロセスの支え」が、機能していない状態を表しています。

つまり、“見るべき大事なところ”を見ていない状態なのです。

ここで、改めて“アプローチ”という言葉の意味に注目しましょう。

たとえば、ゴルフでは「アプローチショット=目標に近づける打ち方」

と理解されていますが、プロセスアプローチにおいてはもっと戦略的な意味を持ちます。

端的に言えば、「意図された成果に近づくための、原理に基づいた行動手法」。

その原理は前述した構造的理解であり、行動手法とはプロセスの特定・相互関係の把握・運用管理のことです。

これらがPDCAとリスクベース思考と結合することで、ISO 9001だけでなく、14001(環境)や45001(労働安全)など、他のISOMSにも応用可能となるのです。

要するに、プロセスアプローチとは「現場を構造的に見るための目」です。

現象の背後にあるプロセスの構造を分析することで、結果だけでは見えない“原因の根”を見つけ、適切な対策を講じる。

それは、偶発的な品質を、意図的な成果へと転換するための道なのです。

品質事故や工程トラブルのほとんどは、プロセスそのものよりも、その構造的管理に問題があります。

だからこそ、今がプロセスアプローチを“空気”から“武器”へと変えるチャンスなのです。

次回【ISOMS #015】では、プロセスアプローチの真の使い道について一緒に考えてみましょう!

 

 

(了)

By イソ丸研究

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