トップ、リーダーの無関心が元凶!

ISOMS衰退原因 そのⅣ  ISOMS#004

本ブログでは、ISOMS衰退原因の最後の四番目「組織トップがISOMS自体に興味を持たない」について解説していきます。

ISO9001やISO14001など、いわゆる「ISOMS(ISOマネジメントシステム)」の認証返上がじわじわと広がりを見せています。

その根底には、実にさまざまな背景が複雑に絡み合っていますが、中でも最も根深い衰退原因として挙げられるのが、「組織トップのISOMSへの無関心」です。

その結果、組織風土の崩壊を招きかねないリスクを自ら作り出すことになります。

ISOMSの認証を決断する際、意外にも多くの経営者はその必要性を直感的に見抜いています。

市場の変化、顧客からの要請、信頼性の担保、SDGsやESGへの対応など、さまざまな文脈の中で、「いまこの制度を取り入れておくことが、将来の経営にプラスになる」と感じて即断即決する姿は、まさにトップリーダーの矜持です。

その決断により、経験豊富で信頼できる人材を管理責任者に任命し、構築・運用体制を整える。

多忙を極める経営者が自ら現場を取り仕切ることはありませんが、的確な人選をもって任せ、期待を寄せる――。

ここまでは理想的な経営者主導の導入プロセスです。

しかし現実には、導入から短期間で目に見える成果が出ることは稀です。

業務改善や品質向上、事故削減、環境配慮の実現には一定の慣れと時間が不可欠であり、日々の努力の積み重ねが数年後にやっと実を結ぶという性質があります。

ここで問題が生じます。

当初あった経営者の関心や熱意が、「成果の実感が乏しい」という理由で徐々に失われ、次第にISOMSは「任せたままの放置状態」になっていくのです。

こうしてISOMSは、経営の中心から遠ざかり、「あってもなくても同じ」存在へと格下げされてしまうのです。

また別のパターンとして、叩き上げ型の経営者に多く見られる傾向があります。

若い頃にTQC・TQM・QC活動などに苦労してきた経験が、「品質管理」という言葉に対するアレルギーやトラウマとなって残っているケースです。

建設業や製造業などでは特に、昔ながらの「現場主義」「経験重視」の価値観が根強く、ISOMSのように理屈や文書を重視する仕組みに対し、無意識に拒否反応を示すこともあります。

「昔、あれで苦労した」

「やらされて嫌だった」

という感情が、ISOMSに対する無関心や否定的なスタンスとして表出してしまうのです。

このような経営者の場合は、導入の動機も「世間体」や「行政指導への対応」のためだったりします。

そのため、成果が数字で現れなければ、「結局コストばかりかかって意味がない」と断じてしまい、ISOMSに見切りをつけてしまうのです。

組織とは不思議なもので、トップの価値観や関心は、明示的に語られずとも現場の隅々にまで浸透していくものです。

とくに、「ISOMSなんか意味がない」「やってられん!」

などと経営陣が漏らそうものなら、その言葉は想像以上の影響力を持ちます。

翌日から現場の士気は一気にダダ下がり、記録や内部監査は形骸化し、改善活動は停止し、文書は更新されなくなっていきます。

これは、組織内に「同調性バイアス」と言うバイアス・モンスターがうごめくからです。

上の者が関心を示さなければ、自分もそこに労力をかける意味がない――。

そうしてISOMSは、音もなく崩壊していくのです。

このように、組織トップのISOMSへの沈黙、または無関心は、それ自体が全社的な機能低下を確実にもたらします。

制度の維持・改善・活用に関心を示すだけで、現場は「やっていて意味がある」と感じ、士気を保ちます。

経営者が常にマニュアルを熟読する必要はありません。

ただ、「成果が出るまで一緒にやろう」と声をかけるだけで、ISOMSは息を吹き返します。

✅ 経営トップがISOMSに「触れた」のはいつですか?

✅ 最近、トップがマネジメントレビューを“自ら”主導したことはありますか?

✅ トップの口から「ISOMSで成果を出そう」という言葉が現場に届いていますか?

もしどれか一つでも「いいえ」であれば、危険信号かもしれません。

ISOMSは本来、現場のための道具ではなく、経営のための武器であるべきです。

トップがその価値を信じ直すことが、再生の第一歩となるのです。

次回は、これまでの4つの衰退原因を総括しながら、ISOMSの立て直しに向けた希望の提言をお届けしましょう。

“返上”ではなく“活用”へと舵を切るために、私たちは今こそ、組織全体で意識を共有する必要があります。

イソ丸研究所

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