ISO維持管理の権威主義をぶち壊せ

ISOMSの衰退原因 そのⅢ ISOMS#003

前々回【Ⅰ】及び前回【Ⅱ】では、ISOMS認証の衰退の根底にある四大原因のうち、

「古い体質のまま改革なし」「外部審査のイベント化」という二点を考察してきました。

今回は、三つ目の原因「ISOMS維持部門が組織内で権威的・閉塞的になっている」について焦点を当ててみましょう。

どの企業・団体でもISOMS認証取得の準備段階では、管理責任者や推進チームが組織内で積極的に動き、多部門を巻き込みながら全社的にシステムの構築と導入を進めていきます。

その過程には、業務の見直しや改善も含まれ、ある種の高揚感、達成感さえあったでしょう。

ところが、認証取得が一段落すると、状況は一変します。

維持のための活動(いわゆる「イソ活」)が、次第に「ごく一部の専門部門・部署」だけの管轄責任となり、日常業務から切り離されていくのです。

多くの組織で見られるのは、「品質管理課」や「環境管理室」が認証維持の実務を一手に担うようになり、それが常態化していく姿です。

この状態が長引くと、ISOMS維持部門は次第に組織内で「特権部門化」していきます。

かつての推進リーダーがそのまま部門長となり、ISOMS規格や審査に関する知識とノウハウを独占するようになっていきます。

周囲からは「ISOMSのことはあの人に任せておけば大丈夫」という空気が醸成され、結果的に他部門との関与や協働は希薄になり、孤立を深めていくのが一般的です。

この構図を筆者は「ISOMSの牙城化」と呼んでいます。

この牙城は、外部審査や内部監査の対応だけに限らず、文書・記録類の改訂権限や、イソ活推進における唯一の判断権を保持し、時として「現場を管理する側」として振る舞うようになっていきます。

これは、ISOMSの「管理のための仕組み」が、「管理する者の仕組み」へと変質してしまった瞬間と言えるでしょう。

本来、ISOMSは「業務そのものをマネジメントする」ものであり、「一部の担当者がマネジメントする」ものではないはずです。

すべての部門が自部門の業務改善やパフォーマンス向上のために用いる「共通の土台」であるはずなのです。

ところが、いつしかそれは一部門の縄張りと化し、他部門からは手を出しづらいもの、さらには関わるだけで業務負担が増える「厄介な存在」と見なされるようになっていきます。

このような状況は、ISOMS維持部門の方々が決して悪いわけではありません。

そもそも彼らは、制度設計の中で自然とそのような立場に追い込まれてきたのです。

「審査で不適合を出してはいけない」

「文書は統一しなければならない」

「記録を整備しないと審査に通らない」といったプレッシャーが、結果的に内部統制を強め、権威化と閉塞性を生み出してしまったと言えます。

だが、それでもあえて問いたい!

そのようなISOMS維持部門の牙城化は、本当に組織全体のメリットにつながっているのでしょうか?

むしろ、ISOMSを「他人事」とする空気を生み出し、業務との乖離を進め、イソ活の形骸化を招いてはいないでしょうか?

最終的には「ISOMSって結局、あの部門が勝手にやってるだけでしょ」という認識が広がり、モチベーションは低下していきます。

あげくに投資対効果も見えず、認証返上へとつながってしまうのではないでしょうか。

これに対する処方箋はあるのでしょうか?

答は明快!

「あります!!」

ISOMSは「専門化」するのではなく、「平常業務化」しなければなりません。

すなわち、特定の部署に閉じ込めるのではなく、各部門の本業と結びつけ、全員が自分の業務改善に活かす道具として再設計し直すことです。

そのためには、維持部門がこれまでの“牙城”を自ら開放し、各部門との対話を重ねていく必要があります。

各部門もまかせっきりにするのではなく、自分事として使える仕組みにする努力が求められます。

「守るISOMS」から「使うISOMS」へ。

「点検するISOMS」から「成果を出すISOMS」へ――。

維持のための活動ではなく、経営成果のための活動へと、パラダイムを転換するべき時が来ています。

さもなくば、ISOMSの未来はいつまでも「閉じた部屋の中の出来事」で終わるでしょう。

そうは言うものの、ISOMSは確かに面倒です。

前提にISOMS規格があり、そこには奥深いリスクマネジメントが潜み、また組織がこれまで培ってきたルール、ルーティーンがはびこり、面倒な内部監査や煩雑な是正処置システムが控えています。

組織の全社員がこれらを徹頭徹尾学ぶには、普段の業務が多すぎます。

しかしですよ、このままではもったいないと思いませんか?

ISOMSという仕組みを利用して成長するチャンスは、まだまだあるのですから。

次回は原因究明の最終第四弾。本丸に迫ります!

イソ丸研究所

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