外部審査至上主義を打ち破れ!

ISOMSの衰退原因 そのⅡ ISOMS#002

本ブログでは、「ISOMS衰退原因」の二番目「外部審査のイベント化」について考察します。

ISOマネジメントシステム(ISOMS)が組織に導入された当初、外部審査は「到達度の確認」や「外部目線からの気づき」を得る貴重な機会と捉えられていました。

ところが現在、外部審査は本来の目的から逸脱し、「ISOMS運用そのものの主目的」や「認証維持のための儀式」と化しているケースが少なくありません。

このように、外部審査が組織運営上の“中核イベント”になってしまうという現象が、ISOMS認証の形骸化と衰退の大きな要因となっているのです。

ISOMSの運用上の目的は、日常業務の中に自然に組み込まれ、継続的改善によって組織をより良い方向へ導くことにあります。

しかし、多くの組織では、外部審査のために特別な準備をする「イベント型運用」が常態化しています。

以下のような風景、思い当たりませんか?

  • 審査前だけ全社的に「見直し」「点検」「体裁整え」が行われる
  • 内部監査やレビューは「審査前の儀式」と化している
  • 不適合や指摘の回避が最優先で、真因追究や改善は後回し
  • 審査員に対して「見せたいこと」だけを演出的に示す

これらの現象が「監査が運用を喰う(The Audit Eats the System)」という逆転現象を引き起こします。

本来は運用が主体であり、監査はそれを映し出す鏡に過ぎないはずです。

それがいつしか、鏡に映すこと自体が目的になってしまったのです。

では、なぜ外部審査がこれほど肥大化し、主役のように振る舞うようになったのでしょうか。

その要因を3つに整理してみましょう。

① 審査依存型の組織文化

ISOMS導入から年数が経過し、システムが惰性で運用されるようになると、内部からのモニタリング機能は弱まり、「外部の目」に頼る文化が根づきます。

「審査で何か言ってもらえれば改善する」

「審査員が気づいてくれないならこのままでよい」

―こうした他律的・他責的な姿勢では、改善が自律的に回ることは絶対にありえません。

 

審査対応部門の権限集中と形式主義

ISOMS維持を任された専任部署や担当者が、「審査を無事に通すこと」だけに注力すると、現場との間に距離が生まれます。

「審査資料を揃える」や「帳票を整える」ことが優先され、現場の課題や声が反映されにくくなるのです。

さらに審査対応が「専門業務」として固定化されると、ISOMS運用が組織全体の知的資産として共有されず、属人化・形式化が進行します。

審査機関や審査員への過度な忖度

審査機関との関係性や、審査員のスタイルに過剰に反応し、

「この人は厳しいから、見せ方を変えよう」

「この審査員はここをよく見るから資料を充実させよう」

といったような“審査員対策”が横行することで、本来の運用意図が捻じ曲がってしまうこともあります。

このような「審査主役型」の運用が続くと、ISOMSが持つ本来の力

――すなわち業務そのものを最適化し、経済性を高め、組織知を蓄積するフレームワークとしての価値――が失われます。

代わりに残るのは、書類の整合性と帳票の山。

その先にあるのは「審査疲れ」と「形骸化した運用」です。

いつからか現場から次のような声が聞こえてくるはずです。

  • 「ISOMSのために余計な仕事が増えた」
  • 「審査のためだけの内部監査なんて意味がない」
  • 「どうせ審査が終われば、また放置されるんでしょ」

このような現場の徒労感は、やがて組織全体のISOMS離れへとつながり、認証返上という判断に拍車をかけるのです。

ISOMSを再生させるには、外部審査を「成果の映し鏡」として捉える感覚を取り戻す必要があります。

審査対応を目的化するのではなく、日々の運用が自然体で審査につながるようにすべきです。

そのためには:

  • 内部監査やマネジメントレビューを“内なる気づき”の場に変える
  • ISOMS維持を“本業と一体化した業務改善”と捉え直す
  • 審査員への“見せる”から、“伝える”への発想転換を図る

このような方向転換が求められます。

いかがですか、あなたの組織に当てはまることはありませんか?

本ブログで二つの原因が解明出来ました。

次回は「ISOMS維持部門の権威化、閉塞化」について考えて行きましょう。

                                                                                                                                                                                                 By イソ丸研究所
※本記事は2024年1月に執筆したものをブログ全面改装で再編集したものです。

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